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2 満穂王
「面をあげよ」
数段高い台座に座している満穂王の前で、膝を折り、地に着かんばかりに頭を下げているのは、海向こうの公人たちだった。
彼らは瑞穂王に、献上品を披露している。
鉄器製の武器、剣、鎧、盾、鏃などと、色鮮やかな絹織物。
「青銅の時代は終わった」
公人たちが持ち寄った献上品を見て、瑞穂王が言う。
剣を取り上げて僅かに鞘をずらし、刃を見る。
「これは、見事な」
王の言葉に公人たちは誇らしげに頭を下げた。
「これからは鉄器の時代。鉄を制す者こそ国を制すことでしょう」
厳かに王に告げる。
満穂王は、しばし黙った。
温和な王と言うイメージだが、威厳がある。
公人たちは、その威厳に圧倒された。
「成ろうことなら、このような武器が要らぬ世になるよう、努めねばの」
満穂王の言葉に、従者たちは恭しく頭を下げる。
満穂王が、手を振って従者に公人たちを住居に案内するよう合図し、言った。
「海向こうの貴人たち、話は分かり申した。私の元で、鉄器、硝子、須恵器(土器)、そして機織りなどの製作を許可しよう。満穂に住むが良い。代わりに、村人にも作り方を伝え、共に優れた物を満穂で作ってほしい」
公人たちは拱手で深々と満穂王に頭を下げた。
満穂王の側に控えていた若者が、公人たちを先導し、満穂王の御前を辞した。
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