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「浮気、してると思いますか?」
コーヒーの香りとともに応接室に入ってきた虎之助が、背後から弥生に声をかける。マグカップをテーブルに置きながら虎之助も記入表を覗き込んだ。
「う~ん・・たぶんしてると思うわ、私は。夕飯の支度済ませてから出かけるなんて、夜ある程度遅くなるって分かってるからでしょ?女同士だったら旦那の帰ってくる時間を気にするだろうし、それに支度してくるより出かけたついでに出来合いの物を買って帰りたくなるんじゃないかな。その方が楽だもの」
「なるほど、さすが所長。やっぱり女は女同士、中年は中年同士気持ちがわかりやすいんですね」
褒め言葉だと自信をもって虎之助は発言した。だが結果、弥生に雷を落とされた。
「そういうのなんていうか知ってる?一言多いっていうんだよ!」
「す、すみません!」
震えあがったせいで手にしたマグカップの中でコーヒーが波紋を作った。
「来週奥さんの写真を持ってきてくれるから、それから調査開始だね。まずは柳くん、いや明智くんから張り込みね」
「はい、わかりました」
腰を落ち着けてコーヒーを飲む。飲みながら記入表のある個所に目がいった。奥さんの出身地は、虎之助の地元・千駄木の隣、日暮里だった。
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