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依頼者・津島弘明が妻・京子の写真をもってやって来た二日後の土曜日、さっそく調査が始まった。
同窓会で復活した仲良しグループの定例会は、日比谷でのランチ集会だという。学生時代の言い方をすれば、女子が5人男子が3人。少なすぎず多すぎず、何かを誤魔化すにはちょうどいい人数かもしれないと、浮気調査の女探偵は頷きを繰り返していた。
「双方偶数は絶対ダメでしょ。3―2っていうのも微妙。裏工作を援護できる人数よね。女が5人もいれば下手な事はできないっていう、多少の抑止にはなるんじゃないかしら」
「はぁなるほどぉ、すごい読みですね」
腕を組み感心然りの虎之助の注目ポイントは、メンバー構成ではなく江戸川乱子の鋭い読みにある。
「そこまで深読みというか推察できるなんてホント所長ってすごいと思います」
「はぁ?今さら分かり切った事に感心してんじゃないわよ!石の上で三年修行したんでしょう?自分の頭もこれくらい回転させられなきゃダメじゃない。頼むよ、明智五郎くん!」
津島京子の写真をスマホで撮影している虎之助の背中にカツを入れ、いざ出陣!と声をあげながらコノミ書店の古いガラス戸を引き、まだまだ半人前の探偵助手を送り出した。
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