男性客からの調査依頼

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 ひと段落着いた様子を見てから、弥生は名刺を差し出した。 「コノミ探偵事務所所長の、江戸川乱子でございます」 相手もすかさず名刺入れを取り出し、自分の名刺を弥生の名刺入れの上に乗せた。 「津島と申します。どうぞよろしくお願いいたします」 中堅の商社の営業担当をしているという。 「夏の時期は大変でしょう?昔と違って今の夏の暑さは異常にも思えますものね」 「そうですね。私らが子供の頃は真夏でもここまで暑くなることはなかったですからね。あ、失礼ですが江戸川さんは、同年代ですか?」 すみません女性に歳のことなんて、とペコペコと頭を下げる津島に好感が持てた。誠実そうな男だ、と同い年の中年女は、 「ええ、津島さんと同い年です」と媚びた笑みを浮かべた。 「ほんとですか?私らよりお若く見えますよ」 期待通りの言葉にさらに弥生の笑顔がはじける。そのやり取りを遠目に見ていた虎之助は、予想通りのリアクションにもはや反応すらしなくなっていた。 「あ、ではさっそくご依頼の件、お話を伺わせていただけますか」 本題に導かれると、津島は先ほどまでの緩んだ頬を引き締めて背筋を伸ばした。
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