男性客からの調査依頼

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 呆れているのか馬鹿にしているのかわからないような複雑な表情の津島の手のひらは、膝の上で強く握られている。友達に対して憤っているのか、それとも不倫という行為そのものに憤っているのか。 「そんなことがあった後での妻の行動を、疑いの目で見るようになりました。悶々として、誰かに話したいと思っても相手がいません。なので・・こちらは浮気調査を専門にされているというので、アドバイスもいただけるのではないかと思いまして」 「そうでしたか。でも・・気になるんですよね?だったら調べてみてもいいんじゃないでしょうか。調べて、何もなければそれはそれでいいわけだし。気持をすっきりさせたいんですよね?」  恥ずかしそうにうなだれる依頼者に、浮気調査のプロとしてではなく、同世代の一女性として弥生は静かに声をかけた。 「お引き受けしますよ。津島さんが正式に依頼をしてくださるなら」  やってなにもないなら、それはそれでいい。商売としてよりも、同い年の男の不安を取り除いて心穏やかな日々を過ごしてもらいたい。  そんな個人的な思いは内に秘め、依頼を申し出た津島に必要事項を記入してもらい、料金システムの説明をし、次回の予約を入れた。
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