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プロローグ
「婚活パーティ!?」
仕事終わりにかかってきた10年来の友人である美波からの電話に、思わず大きめの声を出してしまった。
まだ会社の近くだったことにハッとして周囲を見回したけど、幸いなことに見知った顔は無さそうでホッと息を吐いた。
「そう。そのパーティ年収1000万円クラスが参加するんだって!」
「年収1000万ねえ……そういう人は求める条件も高そうじゃない? 年齢とか見た目とか」
アラサーで平凡なOLがまともに相手にされるとはとても思えないけど……
「そんなの分かんないじゃない! 中には物好きがいるかもしれないし」
「物好きって……」
相変わらずな美波の言葉に思わず苦笑する。
「女性の参加条件29歳までだし、私達もうギリギリじゃない。ラストチャンスで大物狙いしてみようよ。ダメで元々なんだし、やって損はないじゃない?」
「それはまあ、そうだけど」
「渚だって、孫の顔早く見せろーとか親から言われて、結婚のプレッシャー受けてるんでしょ?」
「うっ……」
そうなんだよね……ついこの前も、実家の近所に住んでる私の幼馴染が出産したらしくて、「お母さん達はいつになったら孫が抱けるのかしら……」って溜息混じりに電話で言われちゃったもんなあ。
「うちの親も、結婚はまだしないのか、相手がいないなら見合いでもってうるさくて。結婚だけが全てじゃないっていつも大喧嘩よ」
「気持ちは分かる」
「でしょ? 結婚したくないわけでもないんだけど、ああもうるさく言われたらねえ。相手がいないことにはどうにもならないんだしさ」
「だから、婚活パーティー?」
「そういうこと。お互いこのままだと相手なんて一生見つかりそうもないし。そういうのに参加してみるのも手かなって」
確かになあ……もう数年恋人がいないことを考えると、今までと同じ生活してても相手なんて見つからないかも。新しい出会いだってそうそう無いもんね。
「分かった。一緒に参加する」
「よしっ。じゃあ、詳しい事は後でメールする」
「はーい。あ、電車来たから切るね」
話をしている間に辿り着いていた駅のホームに電車が入ってきた。
婚活パーティみたいな華やかそうな場所が少し苦手なのもあって、不安と期待の両方を感じながら、電話を切っていつもと同じ車両に乗り込んだ。
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