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「物好きがいたわ……」
婚活パーティのラスト、見事カップルが成立した美波は、私にそれだけ言って運営の人に案内されていった。カップルが成立した2人は、別室に案内されて連絡先とかを交換したりするらしい。
誰とも何にもなかった私は、友人の成功を喜びつつ、どっと押し寄せてきた疲労を感じながら会場を1人出た。
美波の相手の男性、私もお話したはずだけど全然記憶が無いんだよなあ。如何に自分がこの婚活パーティーに後ろ向きだったかが分かる気がする。というか、私絶対婚活パーティー向いてない。
まあ、今回は良い社会勉強だったと思うことにしよう。
「はあ……疲れた……」
「――の……!東野!」
疲れのせいか重い足取りでトボトボと駅に向かって歩いていると、後ろから声が聞こえてきた。自分の名前が呼ばれていると気付いて振り返ると、そこにいたのは長谷川さんだった。
「長谷川さん? どうしたんですか?」
「どうしたんですかって……はあ……。折角また会えたし、久々に飯でもって誘おうと思ったのに、俺を無視してすぐに会場出ていくんだもんな。再会を喜んでるのは俺だけかと思って、ちょっとショックだったぞ」
「え……すみません! そういうつもりは全然なくて……!」
「ははっ。冗談だよ。疲れた顔してるし、早く帰ってゆっくりしたかったんだろ?」
「そんなに分かりやすく疲れたって顔してます……?」
「してるな。残業で終電続きだった時と同じような顔してる」
「うそ……」
そんなに疲れた顔してるんだ。本当にああいう場は向いてないんだなあ。
「最近仕事はどうだ? 順調にいってるか?」
「そうですね。まあ、なんとか。長谷川さんが辞めた後、しばらくは大変でしたけど」
「それは悪いことをしたな。でも、お前らなら俺が居なくなっても何とかなるって思ったから、俺は辞めることが出来たんだぞ」
笑ってそう言ってくれる長谷川さんの言葉に、部下として認められていたんだと嬉しくなった。
「――飯はまた今度にするか。疲れてるなら無理はさせたくないし。車で来てるから、家まで送ってやる」
「そんなの悪いですよ」
「遠慮しなくていい。疲れてる時は甘えろって前にも言っただろ」
「あ……」
そういえば、終電続きだった時にも同じこと言われた気がする。
「あの時は、課長も疲れてるのに遠回りなんてさせられませんとか言って一度も送らせてもらえなかったが、今日は断らせないからな。俺は疲れてないし」
「でも……」
「でもじゃない。それとも、俺に送られるのは嫌なのか?」
「そんなことないです! 嫌だなんて思ってません」
「だったら決定。ほら、駐車場行くぞ」
断れないことを悟った私は、何故かちょっと嬉しそうな長谷川さんの後をついて駐車場へ向かった。
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