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どの町も、豊かな自然を持っている。だが、空気の冷たさや匂い、空の高さや星の数なんかは少しずつ違った。原っぱに背を預け、違い探しに興じるのも恒例になったものだ。
「疲れたけど今日も楽しかったね。ここは工業が盛んで面白いよ」
「物が生まれるのは面白いよな。僕も今日の仕事は新鮮だったよ。さて、そろそろ眠ろうか」
体力回復を願い、目を閉じる。夜が明ければ、また仕事探しから始まるのだ。だから、話したくとも限度を設けなければならない。
逆に言えば、際限ない話題があるとも言えるが――以前は、こんな贅沢の存在すら知らなかった。
三ヶ月ほど移動してみて、世界には多くの未知があると知った。景色を見渡すだけでも尽きないのだ。自らの無知を改めて実感する。
ジークも同じらしく、新鮮な反応を連発させていた。知識が豊富だと思っていたばかりに、そんな一面には驚いたものだ。もう慣れたけど。
「まだ眠くないし、話も終わってないよ。ほんと、旅って楽しいね」
興奮冷めやらぬ声が響く。自由を発揮したジークの、奔放さについ笑声が零れた。
窺い見た表情は、やっぱり今日も大袈裟に動いている。まるで大きな子どもだ。
「苦労ばかりなのにか?」
「うん!」
「こうなったら、いっそ全世界を見たいよな」
「いいねー」
大胆な願望でさえ、無謀だと退けない。そんなジークとだから、どこまでも行きたいと願ってしまう。
事実、彼の言う“楽しい”に、素直な気持ちで共感できた。自由の欠片さえ見つからない中で、奇跡に等しい感情と言えるだろう。
無論、叶うなんて夢に溺れちゃいないけど。
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