視る

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「しっかりしろジャック!!」 「ハァッハァ!?ッハァ……オリ……」 座り込んでいたジャックは、脂汗が流れる顔でオリバーを見上げた。 「水をお持ちしましょうか!?」 オリバーの横には慌てる店員の姿もあったが、二人の他には『何も』いない。 「ハァ……いや……大丈夫ですッ」 ジャックは『何が起きたのか』漸く事態を把握できた。 『存在しないものを視たのだ』と。 「大丈夫か?」 「ああ……悪い、もう大丈夫だ」 床に散らばった写真をオリバーと共にかき集めていると…… 「店長お願い!またネックレスを借りたいんだけど……ってぁあ、お客様?」 ドレスを着た女性が乱入してきた。 「刑事さんだよ。またうちのお客様がッ」「ああ~あぁ勝手に話さないで!」 情報を勝手に話し始める男性店員に、オリバーは慌てて止めに入った。 しかし時既に遅し…… 「まさかッ……また事件が……」 女性店員は内容を把握すると顔を蒼くさせた。 「あなたは?」 ジャックが女性に尋ねる。 「ドレスショップの店員で、斜め前の店の……」 女性が自分の勤める店に視線を送ると、その場に居る全員もそちらを眺めた。 視線の先には華やかなドレスを着たマネキンが並んでいた。 「撮影用にマネキンに飾るジュエリーをよく借りていて、今も借りに来たんだけど……」 「…………マネキン」 ジャックは眉をひそめ小さく呟いた。 オリバーが「どうした?」と尋ねてきたが、ジャックは「何でもない」とだけ返す。 オリバーは気を取り直すように男性店員に向き直った。 「とにかく、被害者の確認と監視カメラの映像をお借りします」 「ええ、勿論」 6:21 PM 宝石店での調査を終えたジャックとオリバーは、その後も署と外を行き来しながら捜査を続けた。 しかし犯人の情報も、被害者の残りの体が何処にあるのかも、掴めないままあっという間に夜を向かえ、その日の調査は終了した。 ジャックは署を出る前のデスクで約束通りアイラとアルフィーから連絡を受けた。 「ああ、直ぐ迎えに行く」 車を走らせ二人を各々の家まで迎えに向かう。 アルフィーが遭遇した首の女性に話しを聞くためだ。 「わざわざ家に迎えに来なくても、アルフィーに場所を聞いてるんだから現地集合で良かったじゃない」 二人を車に乗せると、助手席のアイラはジャックの手間に疑問を感じ口にした。 「別に良かったが……嬢ちゃんが三人目として明日ニュースになるじゃないかと思ってな」 「ぁ~!……良かった……ならなくて」 「だな」 凶悪な殺人鬼が彷徨いている事を忘れていたアイラは明らかに動揺していた。 そんな彼女にジャックは呆れぎみに苦笑する。 「ところで青年、静かだな。寝てんのか?」 バックミラーで後部座席のアルフィーを窺うと、眼鏡の奥でしっかり見開く彼の目と合った。 「……起きてるよ……本当は寝ちゃいたいけど怖すぎて眠れないんだ、だから起きてる……」 「そんなに怖いなら無理に参加しなくても良かったんじゃないか?」 「私も言ったの「待ってれば」って、だけど『ゴーストネゴシエータの出動だから頑張る』って」 そんなアルフィーにもジャックは半笑いを溢した。
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