2.man overboard(人が落ちる)

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 緑ジャージのその甲板要員がウィンチの点検でもしていたのだろう。その甲板要員がサラマンダーのパイロットへと声をかけていた。  なにを話しかけたのかはわからない。だが、パイロットの男性が興味を示すものだったのだろう。濃紺フライトスーツの男性が、声をかけてきた甲板要員に吸い寄せられるようにキャットウォークへと向かっていく。  そんな光景を目の前に特になにも気にすることもなく、乃愛と大河はその方向へ歩き進む。  だが。サラマンダーのパイロットが呼ばれた甲板要員の目の前に来た途端だった。甲板要員の男がフライトスーツの襟首を掴んだと思ったら、安全柵の外側、海側へと引っ張り込み、そのまま左舷からなにもない海上へと、パイロットの男を投げ飛ばしたのだ。  乃愛と大河は同時に立ち止まり、戦慄する。  声を出す間もなく、パイロットの男が左舷から消えた。 「やめろ! なにをしている!!」  もの凄い声量で叫んだのは、大河だった。  フライトデッキにいる幾分かのクルーたちが大河の声に振り返った。  緑ジャージの甲板要員が、乃愛と大河が目撃していたのも関わらず、何食わぬ顔で甲板の中心部へと走り去っていく。  なにあいつ! ヘルメットを被って黒いシールドをしている緑の甲板要員が走り去っていく様を、乃愛は視線で追う。だが多数動き回っている甲板要員の中へと溶け込んでいく――。 「そのグリーンジャージの男、捕まえて!」  追いかけたいがそれどころじゃない。 「乃愛! 万が一だ、準備しろ!」 「ラジャー!!」  乃愛は目元にゴーグルを付ける。  腰にぶら下がっているカラビナ、それをひっぱるとワイヤーが伸びて出てくる。そのカラビナをキャットウォーク沿いにある救助用のウィンチへとひっかける。
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