17.不倫疑惑

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 乃愛はいま自分がこんな立場になって、その大切さを身に染みてかんじている。しかもこちらも慎重に打って出ないと、噂を一気に炎上、延焼させる可能性がでてくる。中傷される側も慎重に対処していかねばならない。上官である大河が乃愛の性格をよく知っていて、釘を刺してくれたのは正解だった。  大河がトレイをふたつぶん手にして、若い彼らのそばを通る。  彼らが着ている作業服、袖のワッペンをちらっと確認したのがわかる。  若い彼らも渦中の女のバディである中尉がそばに来たので、『やべえ』という顔で口をつぐんでうつむいたのがわかる。  だが大河はそれとない素振りでやり過ごす。彼らもホッと胸をなで下ろし、顔を見合わせ『なんともなかった』と安堵した様子が見えた。  食器返却口でトレイを返した大河が、そこから乃愛に視線を送って『出るぞ』と出口へ視線を流すアイコンタクトを送ってきた。  乃愛は若い彼らのテーブルを避けるルートで大河を追った。  カフェテリアを出て通路で大河と合流する。 「総務の海曹みたいだ」 「ふうん」 「まあ、上官のことは面白おかしくネタにして楽しむお年頃だよな」 「私もそう思っていた」 「どこから流れてきたかだよな。おまえも謂われのないこと流されておもいっきり『名誉毀損』で悔しいと思うけれど、それ以上に、クインさんの奥さんへのダメージのほうが心配だ。妻が妊娠中で男が浮気しやすい時期にぶっ込んでくるなんて、それらしく信じやすいよな。いちおう、宇品大尉に報告しておく」 「わかった」  大河の落ち着いた対処に賛成だった。  だが隣を歩く大河は、乃愛の様子を上から窺っている。 「おまえ、大丈夫か。こんなことでへこむチビじゃないけどよ」 「チビっていうなっ。いつの話だよ」
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