2.man overboard(人が落ちる)

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「こちらDC杉谷! Man Overboard!(人が艦外へ落下) port side!(左舷から)」  すぐに救助ラインへと大河が報告をする。  ブリッジからも放送が流れる。 This is the true, true, ture, man overboard, man overboard、man overboard、port side!  (重要な報せである。人が艦外へ落下 左舷から落下)  重要な指令のため、大事な語句が二度三度強く繰り返される。 「フライトデッキ左舷側、キャットウォークからパイロットが一名落下、落水! 救命艇の出動を要請する! 場所は甲板レベル1、ブロック1――」  大河は報告を続ける。その間に乃愛は安全柵を跨いで乗り越え、キャットウォークへ。そこから海面へと確認をする。  落ちたサラマンダーパイロットの姿が確認できない!  この高さから落ちたら、下手したら気を失うかもしれない。骨折もしたかもしれない!? そうしたらもし意識があっても海面へと浮上するための泳ぎも皆無だ。  幸い、気候はよく海水温は低くはない。それでも水から体温を奪われて低体温症になる可能性もある。救助の基本は『十五分以内に救い上げる』だ。 「中尉、要救助者が確認できない!」 「いま救命艇が向かっている」 「間に合わないよ! 気を失っていたら浮上できない。見学だけで来ているパイロットなら、甲板要員みたいにライフジャケットも着けていないでしょ。沈む一方だよ!!」  大河の表情にも焦りの色が現れた。だが大河と同時に、再度下方へと確認をすると、パイロットの男性がもがく姿が海面に現れた。
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