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3.水へ飛ぶ
「杉谷、剣崎! おまえたち見ていたのか!」
直属の上官、宇品大尉とバディを組んでいる先輩も右舷から駆けつけてきた。
「自分と剣崎の目の前でした」
「緑ジャージの甲板要員がアグレス部隊のパイロットをキャットウォークへと呼びつけたら、いきなりつかみかかって振り落としたんです。あちらの方角へ逃走しました」
乃愛の報告に、宇品大尉も青ざめている。
だが乃愛は直属小隊長へと懇願する。
「行かせてください。宇品大尉」
宇品大尉も安全柵を乗り越え、その向こうは落ちるだけの艦の縁、キャットウォークへと入ってきて海面へと見下ろす。まだなんとか海面でもがいているサラマンダーのパイロットを確認した視線が険しくなる。
「杉谷。そこにウィラード艦長がいたな。呼んでこい! 剣崎はそのまま待機だ」
大河が頷いて踵を返し、向こうで談笑していたウィラード艦長を呼びに行こうと背中を向けたのだが。そこにはもう、驚愕の表情を滲ませた金髪のウィラード艦長が、旧知のパイロットたちと駆けつけてきていた。
ウィラード艦長も安全柵から海面へと身を乗り出し、男がひとりでもがいている様子を見つけて顔面蒼白になっている。
さらにその隣にもうひとり、金髪のパイロット男性がおなじく身を乗り出して海面を確認し、声を張り上げた。
「三原!!」
サラマンダー飛行部隊、新飛行隊長となった戸塚中佐だった。
もういまにも彼がこの艦から飛び込みそうなほど身を乗り出した。
乃愛と大河は驚いて、戸塚中佐が柵を乗り越えないように遮った。
だが部下が落下してもがいている姿に、さすがの飛行隊長も我を忘れ『三原、三原――』と何度も叫んで身を乗り出すばかり。
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