4.厄女〈わざわいおんな〉

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 二人でしばし無言になりつつ、海面とおなじ高さにあるこのフロアで控えている小型船舶が並ぶ中、DC隊艦内本部セクションがあるフロアまで共に向かう。  さらに見通しをつけた大河が言う。 「今日を狙った気もする。艦船の艦長に初就任を迎えているウィラード准将に対しても、それを祝おうと集まっているパイロットたちを巻き込んで、さらに、おなじくサラマンダーの飛行隊長に就任したばかりの戸塚中佐が率いるパイロットに狙いを定めて、どちらの指揮官にもダメージを与えたことになるんじゃないかって」  確かに。新型艦船の新艦長就任をした准将への祝いムードをぶち壊し、なおかつ、優秀なファイターパイロットを海原へと突き落とし、エリート飛行隊の隊長を慌てさせた。どちらもダメージを与えられたことになる。 「なによ、それ。ていうか、人を突き落とすなんて傷害罪になるじゃん。あれ業務上過失なんかにならないよ。あの男、軍警に突き出されるしかないじゃん」 「だから。この艦のクルーじゃなくて、侵入者ってことだよ。だとしたら、まだ初航海前の艦のセキュリティの低さを露呈させたってことでもあるんだよ。ウィラード艦長の落ち度となるのは間違いない」 「えー!? でもさ、警備隊だって新しく編成された最高のメンバーだって聞いたよ」 「だから、よけいに『絶対大丈夫なクルー編成』を覆されたってことになるんだよ。ほら、今日、御園少佐がいただろう。あの『先輩』の母親、御園葉月中将だって、コーストガード襲撃事件の時に責任を取って艦から降りたんだろう」  なにそれ! つまり初っぱなから、出航する前から、ウィラード艦長を責任者として引きずり下ろすための蛮行!?
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