5.ダイビングガールちゃん

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5.ダイビングガールちゃん

 艦長室に出向くと、ウィラード准将より直々に『ハイダイビング経験者の剣崎少尉がいて助かった。感謝する』と礼を述べられ、乃愛は恐縮した。  あとは当然だが『犯行に気がつくまでの経緯説明』を問われ、『犯人の顔を見たか』、『国籍はわかりそうか』などの聴取が艦長から直接行われ、『司令本部からも呼び出しがかかるかもしれない』と伝えられた。  それからもDC隊艦内常駐のシフトがあり、乃愛もそのまま艦に残り業務に勤しんでいたが、『犯人が捕まった』という報せは届かなかった。  大河が予測していたとおりに『この艦のクルーではなかった可能性』が有力視されているようだ。  だとしたら。危険な男が簡単に艦内に紛れ込んでいたことになる。  この付近に、この新島海軍司令部隊の中に、簡単に紛れて機を狙っている。  狙いはなんだった? 新しい艦への悪評? ウィラード艦長を貶めるため? それともサラマンダーのエリートパイロットを減らすため? 乃愛の脳裏には、緑ジャージの甲板要員が躊躇いもなく三原少佐を力尽くで艦の外へと投げ飛ばした光景が蘇る。身近にそんな恐ろしい人間が潜んでいることに、乃愛は軍人になってから初めてゾッとしていた。  しかも自分の目の前で犯行に及ぶなんて――。  厄女だからじゃない、偶然だ。  ずっと言い聞かせていた。    DC隊第二小隊は大交代にて非番となる。  乃愛が配属された艦は、試験的出航をする日までは港に停泊しているため、新島内であれば下船して自由行動ができるようになっている。  クルーのほとんどは新島内に住まいがある。  乃愛の自宅は、軍関係者用の独身向け平屋が並ぶ地区にある。  独身向けのスタンダードな2LDK。さざ波が聞こえ、遠くに海も見える地区だった。
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