5.ダイビングガールちゃん

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 この新島は小規模だが『新興都市』となりつつあり、セレブ街なんかもできている。開発は三つ、基地街、リゾート&セレブ街、そして新島の自然区画の保護開発で成り立っている。リゾート街はセレブたちの移住地や別荘地となって発展してきた。そうなるとセレブ区画にはブランドショップも進出しているため、予約しておけば発売日に手に入れることができるのだ。本島の都心とは比べものにはならないが、それでも物資は豊かだった。  もう仕事も高価な靴のためにしていると言ってもいいかもしれない。  休暇はこの靴を履いて、お気に入りの海辺カフェでひとりゆったりお食事をするのが乃愛のお楽しみで癒やしなのだ。  今日もこの新作サンダルをビシッと履いて、海辺のお気に入りカフェに夕食にでかける。そうそう、忘れてはいけない。ファッション雑誌にブランド季刊も携えてね。美味しいカフェめしとドリンクで、海辺のマジックアワーの空模様をそばにじっくり雑誌を眺めて品選びをする。 『よし、でかけるぞ』と、雑誌とトートバッグを持って自宅を出る。  住宅地内にあるレンタルガレージまで出向いて、借りている車庫のシャッターをあげる。そこには乃愛の愛車がある。  白色のスポーツカー『RX-7』だ。  その愛車に乗り込み、乃愛は出発をする。  夕を迎えた黄金の海辺を走るのは気持ちがいい。  好きな靴を履いて、きままなお一人様の夜がはじまる。  厄女とか、父が腑抜けているとか……。いろいろあるけれど、自分で自分を励まして癒やして奮い立たせる時間も楽しみもまだ持っていられる。  聞き慣れた『セブン(RX-7)』のエンジン音を感じながらハンドルを握っているのだが……。この愛車が父から譲ってもらったものだと思うと、また切なくなってくる。  そんな実家の鬱屈を吹き飛ばすように、乃愛は海岸線で愛車のアクセルを踏み込む。
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