1810人が本棚に入れています
本棚に追加
1.幼馴染みバディ
少し前に、新しい空母艦が進水式を終えて小笠原海軍基地の港に仲間入りした。
その新しい空母艦のお披露目式がもうじきだった。
任命された艦長は、輝かしいファイターパイロットの経歴を持つ『スナイダー=ウィラード准将』。
防衛パイロットとして最高のフライトチームと言われた『雷神』に所属し飛行隊長を務め、操縦者引退後は最強パイロット集団と言われるアグレッサー飛行隊『サラマンダー』の指揮官、部隊長も勤めあげた。そして次なる准将の使命は、新型空母艦の艦長。
新しい乗員の任命も終え、試験運用を兼ねた航海も実施される予定だった。
その出航と式典を目の前にして、各関係者へと『お披露目』をする。
とくに主だった飛行部隊のリーダーたちは、公開前の事前見学ができることになっていた。
「乃愛、装備の確認をするぞ」
「ラジャー、大河」
艦内巡回にあたる。今日の乃愛は黒いダイバースーツにライフジャケット、ハーネスなどの装備をまとって安全警備にあたる。警戒の警備ではなく、艦内の安全・防火を確認する警備だ。
バディの彼は少し先輩にあたる『杉谷大河』中尉。上官で先輩、そして……『幼馴染み』だ。
なのでつい。ふたりだけの時には階級呼びでもなく、慣れ親しんだファーストネームで呼び合ってしまう。
本来なら大河のことは『中尉』と呼び、大河は乃愛のことは『剣崎』か『少尉』のはずなのだ。
部隊内でも『幼馴染みバディ』としてけっこう知られている。
共に父親は海軍隊員でその息子に娘、二世隊員だった。
幼馴染みなのは、子供時代におなじ官舎に住み育ったから。
おなじように海軍に入隊をして、おなじようにDC部隊、ダメージコントロール部隊を目指した。
憧れた男が目の前にふたりもいたからだ。
最初のコメントを投稿しよう!