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「いいえ。先輩は小笠原育ちだから、お知り合いの上官も多く、ご両親を通じて親しくされてきたんですよね。自然なことなんですよね。スクールでも、米国籍幹部のお子さんたちと仲良くされていたみたいですし」
そこで先輩が『ん?』と不思議そうに首を傾げ、乃愛を見下ろしてきた。
「先輩? スクール?」
「私も旧島基地の日本人官舎で十代をすごしたので、キャンプのインターナショナルスクール通いだったんです。先輩の三つ下です」
「え!? じゃあ、俺たち、おなじ卒業生ってこと」
「そうです。御園先輩はご存じなかったかと思いますけど、先輩は皆が知る方だったので、私はその時から知っていますよ。ただ、私は日本人が多めのクラスにいたので、国際クラスの先輩とはグループが遠かったといいましょうか」
「なるほど。そうか。お父さんも海軍人だったとスナイダーさんが言っていた。となると、おなじ子世代で同窓生ってことになるのか。いま気がついた!」
乃愛も『初めての会話』にたじたじだったが、御園先輩もいちいち驚いてばかりいる。そのせいか、またもや先輩がはっと我に返った顔になる。
「えっとー、今日ってここに食事に来たんだよね」
「はい。今朝から非番になったので。休暇の過ごし方の定番で、この車に乗って夕食によく来ています」
「ここでずっと話し込んでもなんなので、俺、もっとお話したいんだけど、一緒に食事とかどう? ダメかな?」
さらっと食事を一緒にと誘われ、乃愛はかえって絶句していた。
そんな品の良い貴公子のお顔で、でもなんだか無邪気なかんじで、嫌味もなく下心もなさそうにナチュラルに誘える先輩の上手さ?
しかもなんだろう。気構えているのに、乃愛の心にするりとなにかが自然と入ってきたこの感覚――。
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