1831人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺も母親のことでやきもきした時期があったんだよね。母が帰還したら艦長職と大隊長を辞して、妙な新部署に異動になったことがあったんだ。あきらかにその直前の任務でなにかあったとわかるような異動で。『任務中になにがあったか』なんて家族にも言えない仕事だろう。子供だったから、見えるそのままに受け取ってしまったんだ。母には母の事情が職務としてあったのに、『なんでもっと皆が認めてくれるようなかっこよさを続けてくれないんだよ』と、必要以上に突っぱねた時期があったんだよな」
どのような状態で帰ってきた。ではなくて、『子供としてその時どう感じたか』という内容だったので、乃愛は目を瞠る。
これも『同じ』だと乃愛には感じてしまったからだ。
なんだろう。今日は駐車場で赤いトヨタ車に乗った先輩と出会ってからずっとだ。きっと先輩も同じように感じているのだろう。
だから同じテーブルで食事をするなんてありえないことが起きている。
「お父さんにもなにかあって、いまは静かに噛み砕いている時期かもしれないね。軍を退いたみたいだけど、また君が知っているお父さんに戻ってくれる時が来るといいね。俺はいつか戻ってくると思うよ。他人事みたいに聞こえるかもしれなけれど、そうあってほしいと願うな」
『なんでもっと、皆が認めてくれるようなかっこよさを続けてくれないんだよ』
まさにこれだった。なんだか泣きそうになってきた。
最初のコメントを投稿しよう!