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「コンパスOK、ハーネスOK」
「タイムウォッチOK、深水計OK……」
装備チェックを終え、いざ巡回へと向かう。
「俺たちはフライトデッキから階下へ巡回する」
「ラジャー、中尉」
そこは上官として乃愛は大河に敬礼をする。
いつもより艦内はざわついている。
今日は軍内関係者のために『式典前の事前見学』が設けられている日だった。
「今日は小笠原基地の飛行隊が見学に来るんだってさ。教育隊のアグレスのサラマンダー飛行隊、あと機動追跡飛行隊のジェイブルーもだったかな。飛行隊長が主だったパイロットを引き連れてくるんだと。新艦長が現役時代に雷神パイロット、操縦引退後はサラマンダーの部隊長を歴任していただろ。顔見知りばっかりくるらしくて、はりきってるらしいぞ」
「そっかー。昔馴染みの空部隊仲間がやってくるってことね」
「だから。フライトデッキに今日は人が集まるってこと。そんで、新艦長から親しい隊員たちを迎えるから落ち度がないようにと、クルーたちもちょっとピリッとしてんだってさ」
DC隊の艦内部隊室から出た乃愛と大河は、『お出迎え準備』に駆け回るクルーたちの喧噪をくぐり抜けるようにして、艦内から外通路へと出た。潮風があたるその場所から、鉄階段を使って船体上部のフライトデッキへと向かう。
「親父さん、最近、どうなんだよ」
「べつに。かわらないよ。ぼさっとした生活をして、たまに漁の手伝いで日銭稼いで、海辺でぼうっと釣りをしている」
「そっか……。でもさ、漁に出る元気は出てきたってことだよな」
「そうだけどさ……。いや、もう、お母さんがなにも言わないなら、それでいいよ」
軍人を辞めてからの父はそんな生活をしている。
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