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8.オタク貴公子
テーブルにそれぞれの食事が揃い、改めて『おなじテーブルで食事をすることになった』ための『乾杯』をかわした。
今度は乃愛から先輩に尋ねてみる。
「先輩も今日は非番だったんですか」
「うん。ジェイブルーも24時間勤務でシフト交代制だから、昨日、新型空母見学に新島に出向くなら、翌日は非番にして、両親のところに顔をだそうと思ってね。一泊してここで食事をしてからフェリーで旧島にある自宅に帰ろうとしていたんだ。そうしたら、少尉に会ったし、まさかのRX7-FDオーナーだったなんてね」
「ご両親は新島に、先輩は旧島にお住まいなんですね。お母様の御園中将は数年前に、こちら東南防衛司令部の新しい部署に異動されたんですよね」
「作戦と演習の計画を統括する『作戦本部』の司令官になってから、新島に移住したんだ。父もついて行っちゃってね」
「お父様はもう退官されたんですよね」
「そう。母と一緒に移住するために、延長雇用契約を解除して、専業主夫になったんだ」
「専業主夫!」
女性将官である奥様のほうが階級が上であるご夫妻というのは、軍にいれば誰もが知っていること。それを年上の旦那様が長年、後ろからしっかり支えてきたこともよく知られている。
だが、その奥様に付いていき専業主夫をしているというのは初耳だった。だいたいは延長雇用契約を選択しなかったとしても、軍関連の民間企業などに再就職することが多い。御園元准将も新島のどこかで働いているかと思えば、なんと専業主夫とのことで、乃愛は驚きを隠せない。
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