8.オタク貴公子

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「うちは家事が得意なのは父親のほうなんだ。新島配属になったら小笠原旧島在住の隊員は家を出て、単身赴任するしかないじゃん。もうね、母をひとり暮らしにできるか、適当になるに決まってる。そんな重要な部署に行くのに私生活が乱れたら大変だとか、父のほうが大騒ぎして『家政夫する気満々』で行っちゃったんだよね」 「素晴らしいお父様ですね。子供世代の私でも『奥様を縁の下で支える旦那様』として知っていますから、納得です」 「縁の下根性は、まあそうなんだけど。やるとなったら徹底的に細部にまでこだわる頑固さは、母より父が上なんで、家の中を完璧にしていてうるさいのなんの……」  よほどの完璧さなのか、御園先輩がため息をつきながらポークサンドを頬張った。そんな完璧主夫が自宅をしっかり守っていれば、キャリアを背負って生きてきたお母様は、それは思う存分お仕事ができるだろう。働きたい女性としては羨ましい環境だなと、乃愛も好物のアボカド海老サンドを頬張った。 「いま両親は、この新島リゾート街にあるマリーナ地区のマンションで二人暮らし。そこにたまにご機嫌伺いで俺も顔を出していて、それが昨日だったんだ」  新島のリゾート街マリーナ地区といえば、セレブ中のセレブが集まっている高級住宅街だ。乃愛が靴を買いに行くハイブランドショップもあのあたりに集まっている。  やっぱり、セレブリティな一族なんだと乃愛は驚愕する。 「すごい! あのあたりのマンションとか土地って、いま日本で一番地価高騰していると聞いていますよ。そこのマンションを――」
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