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「そう? 父も工学科にいたし、父方親族が精機関係の業者だから、パソコンいじってあれこれは遊びで教わったし、物心ついたときから、いつのまにか飛行機とパイロットに囲まれていたからね。知らないうちにマニアックに没頭しちゃってるの」
「なるほど。そういえば、先輩のお父様のご実家は、あの澤村精機ですもんね」
「うん。澤村の祖父ちゃんが会長で、叔父がいまは社長なんだ。その叔父さんが遊びたいソフトもゲームも作ってくれたりしたんだ。俺のためだけのものとかね」
「俺だけのソフトにゲームって贅沢ですね。それにお料理もするなんて、素晴らしいですね」
「それはほら。母が航海に出ている間は、うちは父が料理をして俺の面倒をみてくれていたから、手伝いをしていたら自然とやっていたってかんじ。うちの父、こだわり強いから、あの人の料理を叩き込まれちゃうと自分で作って食べたくなっちゃうんだ」
「しっかり仕込まれたってことですね。得意料理ってなんですか」
「ビーフカレーかな! あ、ビーフシチューも頑張っちゃう」
なにげなく聞いたのに、これまた駐車場で出会った時のように、先輩が嬉しそうにきらきらとした笑顔になっていく。え、そんな嬉しいこと聞いたかなと乃愛が後ずさるほどに――。もうそれだけで『料理のことを聞かれるのは特に嬉しい』のだと悟ることができた。
「でも、最近はキャンプ料理とかいいなって思ってるんだ。父もはまってきてる。生のコーヒー豆を煎ることから始めるのとかやりだしてんの。ちょっと俺も極めたい」
「生の豆から煎る、ですか」
「フライパンで自分で焙煎するってこと」
「そこから!?」
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