9.生意気サニー君

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 こちらの男性も遠くから見かけることはよくあるが、乃愛と対面するのは初めてなのでご挨拶をする。 「剣崎乃愛です。ウィラード准将が艦長就任した艦のDC隊員です」 「うん。親父さんのほうが俺は知ってるかな。武道訓練でもよく一緒になったから。娘さんがDC隊員になったことは俺の耳にも入ってきてたからな。昨日はご苦労様。無事でなにより」 「ありがとうございます。あ、私、実はフランク大佐のことは子供の時から印象に残っていまして――」 「え、そう? なんだ海人世代の女子にも、俺って目に焼き付いちゃってたんかな~」 「はい。かっこいいお兄さんという記憶が残っていますし、私がいた日本人クラスの女子の間でも『あのお兄さん素敵だよね』とよく噂していました」 「マジかよ! おい、海人、聞いたか。俺の魅力が拡散される範囲の広さ。俺ってティーン女子から熟女までイケる男だってことだよな~」  少し伸びている金色の前髪をふいっとかき上げて、けっこうな年齢のオジサマのはずなのに、胸を張って得意げなポーズを取っている。シャープでクールなオジサマなのに、妙に子供っぽい姿を見せられて、乃愛は苦笑いを思わず浮かべてしまっていた。  御園先輩も『はあ? なにいってんのシド』と呆れた顔を見せている。  しかも急に冷めた視線をオジサマに向けたかと思うと、貴公子のお顔に意地悪い笑みを見せたのだから乃愛は目を瞠る。あんなに爽やかだった先輩が、そんなお顔もするのかという困惑だった。
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