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「そりゃあ、シドが『王子』と呼ばれていたのは俺も知ってるよ。モテモテだったのも見てるけどさ~。だからって中学女子ぐらいの子が記憶していた『素敵お兄様』なんて十何年も前のことじゃんか。いまはオジサンだろオジサン、完全にオジサン」
「なんだと~、この生意気サニーめ」
えー、お日様貴公子さん、そんな毒舌を持っていらっしゃったのと、乃愛はソーダを飲みながら目を丸くして眺めているだけに。
「まあ、でも。シドは心美がチビの時も、ずーっと懐かれていたから、ちいさい女子でもくっついてきちゃうのは、わからないでもないか」
「ほらな。俺は女を護るために生まれてきた男みたいなもんだからな」
「はあ~、毎回毎回、よく自分から言えるよなあ。でもほんとのことだしなあ。敵わないよシドには」
御園先輩も認める『色男』ということらしい。
だが乃愛もそう思わざる得ない『いままで』があるのも確かだった。
官舎に住んでいたジュニアハイスクール時代になるが、当時のフランク大佐はおそらくいまの乃愛ぐらいの年齢だったかと思う。それはもう、金髪の素敵なかっこいいお兄さんだったことも知っている。そして官舎で集う母親たちのお喋りにもよく登場してきた。フロリダ本部のお偉いさんのご子息で、金髪青眼、逞しい体つきで、功績も優秀で独身。王子様みたいなお顔で、そばに来たらそれはもう色気で女はふらふらと酔ってしまいそうになる男性だと――。彼が遠くを歩いているのを見かけただけで『私、昨日、〇〇でシドさんを見たの』と自慢したくなるほどだったらしい。
だから乃愛としても『大人の女性たちから見ても素敵なお兄さん』として記憶していたのだ。
――ということも、乃愛は目の前のフランク大佐に話していた。
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