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急にしどろもどろになる大佐殿を目の前にして、乃愛は当惑する。そうしたら今度は海人先輩が意味深な笑みをフランク大佐に向けて、ニヤニヤしはじめる。
「あー、わかっちゃった。俺も思い出した。漁村の屋台『なぎ』で、臣さんと前後不覚になるほどに酒を呑んで、父さんがふたりをタクシーにほうりこんだって言っていたあの日じゃないかなあ」
「え、海人、おまえ、隼人さんから聞いていたのかよ」
「俺もハイスクール生で、父さんが帰宅した時にぼやいていたこと覚えてるよ。臣さんが酔っ払うってことのほうが印象に残っていたから。っていうかさ。その時って、臣さんと心優さんは結婚直前の婚約状態で官舎で同棲していたって聞いてるけど。まさか、シド、その時に邪魔しにいったのかよ」
「いやー、しらねえ。覚えてねえなっ」
「それより、シド。『同期の桜』って……。臣さんと同期じゃないのになんだよそれっ」
先輩が勝ち誇ったようにケラケラと笑い出した。
急にフランク大佐が慌てだして、突撃してきた席を立ち始める。
「さーって、俺も食事が終わったから帰るな」
そそくさと立ち去ろうとしているフランク大佐を、御園先輩が呆れた視線を向けて『バイバイ』と手を振って追い返そうとしていた。
「心優さんが新島で単身赴任しているからって、あんまり周りをうろつくなよー」
先輩のそのひとことで、あの大佐殿が顔を真っ赤にしていきり立った。
「俺だっていまは新島の隊員だから、ここにいるだけじゃねーかよ。それに心優のところに会いになんか行かねーわ。それよか、ここに事務所を移転したオジキのところのほうによく行ってるからな」
「エドのところ? そっか。エドのところにも綺麗な人いるもんね」
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