10.お守りID

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 それでも御園先輩はスマートフォンを手にして、乃愛の情報を得ようと操作を始めている。 「俺、出会った隊員とはだいたい連絡交換するの。情報交換したいからね。出張や遠征で他基地に行ったら、そこで情報網作っておきたくて人脈を広げていくんだ。DC隊とも繋がりたいな~って」  また……。30歳を迎えたばかりの大人の男性が、下心なんていっさいないという無邪気な笑顔で、女性の連絡先を得ようとしている。  嫌味のないその笑みに、乃愛は陥落する。 「では、その……。困ったことがあったら先輩に相談するかも……、ということで」 「もちろん、もちろん! おなじスクールの卒業生で後輩なんだから、なにかあれば、すぐに相談してほしいよ。それに俺、マジで人脈あるの。わかるっしょ」  これまたイタズラ男子のようなニヤリ顔をして、得意げになる先輩。そんな彼を見て、ついに乃愛は吹きだしていた。 「ですよね~。ウィラード艦長のこと、ファーストネームで呼んでいるくらいですもん」 「いまはクールな怖い准将殿みたいに見えるけど、雷神で現役パイロットだったときは、うちの兄貴と対抗心燃やしまくって、超熱血なファイター兄さんだったんだよ。『お若い時はすぐにムキになっていましたよね』みたいに言うと、スナイダーさんが『チビだった海人が~』と、俺に返してくるのも定番」 「えー、ウィラード准将が熱血兄さん? 想像つきませんったら」  あれ? うちの兄貴って誰? たしか長子長男で、妹さんがいる二人兄妹だったのでは?  そう思ったが乃愛もバッグからスマートフォンを取りだし、互いのメッセージアプリIDを交換する操作に必死になる。そのうちに、話題が他に流れてしまった。
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