1831人が本棚に入れています
本棚に追加
それでも御園先輩はスマートフォンを手にして、乃愛の情報を得ようと操作を始めている。
「俺、出会った隊員とはだいたい連絡交換するの。情報交換したいからね。出張や遠征で他基地に行ったら、そこで情報網作っておきたくて人脈を広げていくんだ。DC隊とも繋がりたいな~って」
また……。30歳を迎えたばかりの大人の男性が、下心なんていっさいないという無邪気な笑顔で、女性の連絡先を得ようとしている。
嫌味のないその笑みに、乃愛は陥落する。
「では、その……。困ったことがあったら先輩に相談するかも……、ということで」
「もちろん、もちろん! おなじスクールの卒業生で後輩なんだから、なにかあれば、すぐに相談してほしいよ。それに俺、マジで人脈あるの。わかるっしょ」
これまたイタズラ男子のようなニヤリ顔をして、得意げになる先輩。そんな彼を見て、ついに乃愛は吹きだしていた。
「ですよね~。ウィラード艦長のこと、ファーストネームで呼んでいるくらいですもん」
「いまはクールな怖い准将殿みたいに見えるけど、雷神で現役パイロットだったときは、うちの兄貴と対抗心燃やしまくって、超熱血なファイター兄さんだったんだよ。『お若い時はすぐにムキになっていましたよね』みたいに言うと、スナイダーさんが『チビだった海人が~』と、俺に返してくるのも定番」
「えー、ウィラード准将が熱血兄さん? 想像つきませんったら」
あれ? うちの兄貴って誰? たしか長子長男で、妹さんがいる二人兄妹だったのでは?
そう思ったが乃愛もバッグからスマートフォンを取りだし、互いのメッセージアプリIDを交換する操作に必死になる。そのうちに、話題が他に流れてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!