11.岩国メモリー

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11.岩国メモリー

 非番が明け、また乃愛は港に停泊している新型艦へと職務に戻る。  いまこの艦はお披露目式典を控えているが、その後すぐにテスト航海するための出航も控えているため、クルー達は航海に出る準備もしている。  乃愛たちDC隊の役目は、港に停泊しているその時も専ら『艦の安全』を保つことだ。  火災に備え、損壊に備え、浸水にも備える。いつそれが起きても対処できるように待機し、安全を保持するための準備に訓練、そして艦内の見回りに徹する。非番交代でいまは陸にあがれるが、航海が始まったら艦内でのローテーション勤務になる。  ふたたび艦に戻ってきて、大交代にて前シフトの隊員と引き継ぎを行う。その後、艦内DC部隊本部室へと大河と共に呼ばれた。  そこは艦内のDC隊を束ねている部隊長が控える一室だった。  この艦で新しく編成されたDC部隊、その部隊長『長門(ながと)中佐』が待ち構えていた。  デスクに控えていた部隊長は、乃愛と大河が入室すると立ち上がる。 「交代後早々にご苦労。ふたりに会いたいと、旧島から訪ねてきてくださった」  長門中佐と雑談をして待っていたのか、部隊長デスクの目の前にはパイプ椅子が二つ用意され、そこには濃紺のフライトスーツを着込んでいる男性がふたり座っていた。  ひとりは金髪の男性、もうひとりは日本人で黒髪の男性。  金髪の男性は、先日、フライトデッキで出会っている人――。『戸塚中佐』だった。  彼は乃愛と視線が合うなり、感激したような笑顔で椅子から立ち上がった。 「剣崎少尉だね」 「はい……。剣崎乃愛です」 「小笠原飛行教育隊、サラマンダー飛行隊の戸塚です。君が救助してくれた飛行隊員の上官となります」
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