11.岩国メモリー

3/7
前へ
/465ページ
次へ
 さらに乃愛は、艦長が直接言ってくれたことではなくとも、『幸運だった』と言われていたことに、ひそかに感動して打ち震えてる……。  見知らぬ一般隊員たちが『厄女』と揶揄してきても、上層部上官が『幸運』と言ってくれただけで、気にしないようにして気にしている心の枷が少し緩んだ気もして――。  嬉しくて言葉を失っている乃愛に、次に声をかけてきたのは戸塚中佐と共にいた日本人男性だった。 「小笠原飛行教育隊、アグレッサー飛行部隊の部隊長をしている柳田です」  黒髪の男性も乃愛に敬礼をして、恭しいお辞儀をしてくれる。 「戸塚と長く共に飛行をしてきた者です。その彼より先にコックピットを降りることになり、彼に新しい相棒をと、やっと探し当て口説いて来てもらったパイロットが三原でした。あそこでなくしていたら、サラマンダーにとっては大打撃でした。救助に感謝いたします。ほんとうに、ありがとう」  こちらのパイロットも戸塚中佐と共に、横須賀のアクロバット飛行隊『マリンスワロー』から、小笠原アグレッサー『サラマンダー』、そして実務飛行隊のトップフライト『雷神』、そしてまたサラマンダーに戻って来て、戸塚中佐とトップエレメントに。つい最近、操縦者を引退したことで、サラマンダーの新部隊長になった大佐ということだった。  タックネームは、柳田大佐がシルバー。戸塚中佐がクイン。長年の相棒。  そんなシルバー大佐まで、新島にわざわざ乃愛のために来てくれたことにも感激だった。なのにまた、こんなに頭を下げられて恐縮するばかり――。  もうどうしてよいかわからずに、ずっとタジタジするだけだった。  そこはDC隊部隊長の長門中佐が繋ぎ役をしてくれる。
/465ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1830人が本棚に入れています
本棚に追加