11.岩国メモリー

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「20メートル。なるほど。それならフライトデッキからでもいけるということだったのか。ウィラード艦長が確信したこともうなずける」 「私は高いところから行けますけれど、DC隊なら水に飛び込むことに恐れをいだく隊員はいないと思います。私でなくとも誰かが飛び込んでいたかもしれません」  たまたまそこにハイダイビング経験の自分がいたから指名されただけ。DC隊は泳ぐことを得意としている隊員が多い。誰であっても水には恐れを抱かない。そんなDC隊のことを持ち上げたからなのか、部隊長の長門中佐は腕を組んで『うんうん、そうだな』と嬉しそうに頷いている。だが乃愛にとっては、自分だけの能力ではないという謙遜のつもりだった。  それでも戸塚中佐は優しく目元を伏せて、金髪の頭を振った。 「そうだとしても、鮮やかだった。部下が九死に一生の状況であったし、女性の君があの高さから飛び込むことにも驚愕だったが、いまはもうキャットウォークから飛んだ君の姿が焼き付いているよ」  美しすぎるオジサマにそこまで言われると、さすがに乃愛も謙遜しつつも口元がほころび、嬉しさが込み上げていた。 「お役に立てて光栄です」  そこで『クイン』こと戸塚中佐と視線ががっちり合う。  綺麗な翠色の眼、優しげな眼差しだと感じた。男らしさの中に、そんな柔らかさがあるから『クイン』と女性的な名がついたのかなと初めて思わされる。 「三原が海面浮上した際に、君の名を聞いたけれど答えてくれなかったと残念がっていたよ」 「当たり前のことをしたので、わざわざ言えなかったんです……」
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