12.愛妻家のお話

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12.愛妻家のお話

 戸塚中佐の奥様がご懐妊と判明したことで、DC部隊長の長門中佐も『おめでとう』と祝福をしている。 「愛妻家の君だからなあ。だったらもう、操縦者として空に行かせていたこと心配だっただろう。大丈夫なのか」 「仕事は彼女が望む限りは口は出さない主義です。ですが、今年初めから育児のこともあって、しばらく地上勤務に移っていたところです。産休、育休が明けたらまた現場に戻る予定です」 「そうか、だったら身体的なことは安心だね。うちは三姉妹なんだけれど、子供が増えていくのは賑やかになって楽しみなことだよ。そうか、美しすぎる男が、美しすぎるお父さんになっていくってことか」 「いいえ、『美しすぎる』はこの年齢では余計なものです。でも、ありがとうございます。中佐は女の子パパさんなんですね。中佐のような父親になれたらと思います。ほら、もう、銀次さんが余計なことを言うから。銀次さんだって愛妻家でしょう。俺は独身のときから見せつけられてきたほうなんですけどね」 「あはは、ついつい。だってさあ。おまえってばなにかにつけて、藍子と繋げるからさ。岩国の話が出て、俺も懐かしくなっちゃったのよ」  お調子者ぽい柳田大佐が、生真面目な後輩、戸塚中佐をいじってつついて遊ぶことは日常茶飯事といわんばかりの姿だった。 「それにしても。DC隊の部隊長にまで、エミルの『愛妻家』が伝わっているとはねえ」  柳田大佐がまた戸塚中佐をからかうように、ニヤニヤとにやついていた。そこは長門中佐もおかしそうに笑うと、柳田大佐に続いて話し出す。
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