12.愛妻家のお話

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「戸塚君のそばには、御園の長男もいるし、双子もいるでしょう。彼らも目立つから視線を集めやすいこともあるだろうね。それに、若い彼らが先輩のことを話題にすれば、それだけで広まっていきそうだよね。戸塚君が奥様を労る姿を日常で目撃しているのだろう」 「はあ、若い彼らから広まる……、それは否定できませんね。それでも、若い彼らに助けてもらうことも多く感謝しています。とくに御園少佐は、妻の相棒でもありますから」  御園先輩の口からも出ていたが、ほんとうに戸塚中佐とご家族とは親しくしているらしい。  そんな戸塚中佐の隣にいる柳田大佐が、またもや楽しそうに笑い出して、彼の背中をバンバンと叩き出す。 「そりゃあ、お騒がせ双子を常に引き連れていたら、話が広まるのも早いだろうさ。海人と双子の『元・海曹ライン』ですぐに広まるだろうしさ~。まあ、部隊長になった自分もあの双子のコントロールに手を焼いているんですけれどね?」  またもや御園先輩の名が出てきて、乃愛は密かに聞き耳を立ててしまう。  御園先輩、あの双子パイロットと親しいらしい。元々海曹時代からつるんでいて、そこで出来た『海曹仲間』の間で、先輩上官の噂話はばっと広まるのだとか。 「エミルが美瑛で初スキーをしたときもさ。すっころんだ写真を海人がユキナオに送信しただけのものが、うっかり双子から漏れて、海曹ラインに広がったんだろう。空では気高いクインさんが、雪原では手も足も出ずに、子供用ゲレンデで転んでへたれているって、海曹たちが『レアもの画像』として騒いだって話もあったじゃんか」  恐るべし『御園一派海曹ライン』と乃愛は苦笑いを浮かべる。
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