12.愛妻家のお話

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 戸塚中佐は面白くないようでぶすっとしていたが、柳田大佐と長門中佐は、クインでもそんなことあるのかと笑い合っている。だが笑いすぎて申し訳ないと、長門中佐が弁明に入る。 「いや、実は、DC部隊長として、あちこちの情報を聞きかじるのは、御園の長男君や双子君たちから伝わるというよりかは、巡回航海でよく一緒になる警備隊長のシド君からなんだけどね」 「あ~、なるほど! 艦が出航するとDC隊と警備隊は強く連携しますもんね。シドさんもエミルにはよく絡んできますから、『俺とミミルは同じ金髪のいい男同士』とかってね」  また長門中佐と柳田大佐の快活な会話がやりとりされていく中、聞いているだけの乃愛も思い出す。 『金髪で男前同士』は確かにそうだなと、先日、シド=フランク大佐に会ったばかりの乃愛も『ブロンドのイケオジ、ふたり』を頭のなかに並べて、そっと頷いてしまっていた。 「あはは! あのシド君なら言いそうだ! あのシド君から『おなじいい男』と認められているだなんて、やっぱり戸塚君は『美しすぎる男』ということなんだよ」 「いえもう、長門中佐も銀次さんも、それ以上は。ほんとうに、その広報キャッチコピーはいまはもう関係ないですから」  上官たちの話を聞いていた乃愛は、『御園先輩の名がでただけで、芋づる式みたいにいろんな人が登場する』と一驚していた。しかも横繋がりで情報が流れていくみたいで、御園一派が口を開くとまたたくまに噂が広がっていくようで油断できないとも感じたほどだ。  そんな上官たちの戯れを、大河と無言で立ったまま聞き流していたら、長門中佐と柳田大佐がハッと我に返った顔をそろえた。 「すまない。滅多に顔を合わせないものだから、話が盛り上がってしまった。剣崎と杉谷は持ち場に戻るように」
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