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今日も小笠原の海は青く煌めいていて、潮風は少し強く、鉄階段を上階へとのぼる幼馴染みバディにも吹き付ける。
気まずい話題に互いに沈黙したまま、やがて甲板レベル上階のフライトデッキへと到着する。
新空母艦には高官を乗せてきたプロペラ輸送機に、配備されている戦闘機が並んでいた。ヘリコプターも数機、今日は駐機している。
遠くにはフライトスーツを着込んで見学をしているパイロットの集団が見える。
フライトスーツの色でだいたいどこの飛行隊が来ているか判る。
大河も遠くにいるパイロットたちへと視線を馳せている。
「濃紺のフライトスーツのサラマンダーと、青色スーツのジェイブルー追跡隊、来ているな」
「旧本拠地だった小笠原島の部隊だね。あちらに残っている飛行隊が一緒に来てるのかな」
「おー、いるいる。美しすぎるアグレッサーと、司令殿のご子息が。あのふたり目立つよなあ」
乃愛も遠目に『目立つ』と言われているパイロットへと視線を向ける。
ダークブロンドの渋いオジサマに、栗毛の見慣れた男性――。
オジサマは『美しすぎるパイロット』として名を馳せているエースパイロット。戸塚エミリオ中佐だ。
栗毛の若い男性は、小笠原の日本人官舎で十代を過ごした乃愛にとっては、おなじインターナショナルスクールに通っていた先輩。御園海人少佐。
『見慣れている』と言っても、あちらは乃愛とは面識はない。ただ彼は、母親も父親も海軍高官である軍人一家の子息のため、乃愛でなくとも誰もが知っている御曹司。
御園海人少佐は乃愛の三つ年上で、スクールの先輩だった。
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