13.大佐と乃愛ちゃん

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13.大佐と乃愛ちゃん

 三原少佐を突き落とし落水させた犯人はまだ捕まっていない。  そのかわりに警備がかなり厳しくなり、警備隊が再構成され、多少の入れ替えがあったようだった。  初出航、テスト航海を目の前にして、停泊中の空母にて変わらずにシフト勤務に当たっている。  式典と初出航を迎えるまで、あと一ヶ月と迫ってきた。艦内は出航準備で忙しくなってきている。非番で陸にあがれるのはあと2~3回と迫ってきていた。  今回の非番で乃愛は家族に顔を見せるかどうか迷っている。  もちろん母には顔を見せていきたいが、無口な父の背中だけを見て出航すると気分が落ち込みそうで悩んでいる。  母がパートをしているファーストフード店まで顔を見せて、それで済まそうかと思うのだが……。こんな仕事をしていると、御園先輩の言葉を借りるなら『任務から帰ってきたら同じ姿ではないこともある』ということもままあるので、悔いのないように顔を見ておくということも大事だとも思うのだ。それでなくとも、乃愛の父自身が、無事に帰還できなかった相棒を持つ男故に、娘の自分も『無事に帰ってくる』という気もちは過信なのだと思わざるを得ない。    再度、非番の日を迎える。  大河と共に艦を下りる時、乗船口にて下船外出と乗船の厳重な出入りチェックを行っている警備隊と出会う。  黒い戦闘服が目印の警備隊員たちは、屈強の海兵たちで、装備も物々しく険しい眼差しの男たちばかりだった。  その中で、特に眼光鋭い金髪の男性と乃愛の視線が合った。 「お、剣崎少尉じゃないか。DCの大交代後、非番で上陸ということか」  乃愛はすかさず敬礼をする。 「お疲れ様です。フランク大佐。警備、ご苦労様です」 「あんなことがあってさ。俺も今回、乗ることになったんで。よろしくな」
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