13.大佐と乃愛ちゃん

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 敬礼をする乃愛にフランク大佐が表情を崩して笑ってくれた瞬間、周囲の警備隊員が目を丸くしていることに気がついた。  それは隣にいる大河もだった。『おまえ、なんで大佐とそんな親しげなのか』と言わんばかり。 「で、そっちが乃愛ちゃんのバディってこと?」  フランク大佐が『乃愛ちゃん』なんて気軽に呼んだので、またもや警備隊員たちが目を瞠る顔をそろえてしまい、乃愛とフランク大佐を交互に眺めてなにか言いたげだった。 「そうです。バディの杉谷中尉です。岩国と旧島でおなじ官舎で育って、御園先輩とおなじスクールの卒業生です」 「ほう。幼馴染みでバディ。なかなかいいじゃないか。まさかだけど……、その~、関係とか~……」  男女の関係があるのかと聞きたいらしい。  年頃で幼馴染みで組んでいたら、その気になってもおかしくない組み合わせに見えたのだろう。実際にそのような目線で見られることはいままでも何度もあった。  大佐のそばにいる補佐官らしきクールな面差しの男性が『隊長、隊員のプライベートは気易く聞いてはいけませんよ。特に女性には――』と小声で諫めたことで、フランク大佐も我に返ったようだった。  そんな様子を察して大佐をかばうように大河から告げる。 「自分は既婚者です。妻もおなじく岩国と旧島からの幼馴染みで、彼女は剣崎の親友でもあるんです」 「へえ、幼馴染みバディに、幼馴染み夫妻、そして親友か。いいじゃないか」 「妻と剣崎は、父親もバディ同士でしたので――」  そこでフランク大佐の表情が一変する。すっと真顔になったのだ。 「剣崎少尉の父親とバディ? ということは杉谷の妻とは、相馬少佐の娘ということか?」 「はい、そうです。同様に、自分の父も海軍勤務で、地上管制員をしています」
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