13.大佐と乃愛ちゃん

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「そうか……」  乃愛の父親と陽葵の父親を揃って知っているという顔だと悟った。  艦の警備を担う警備隊、艦の安全を担うDC隊は、航海中の艦内保安で強く連携をする。フランク大佐はこれまで艦の警備を歴任してきた警備隊長でもある。乃愛の父親とバディの相馬パパが現役だったころもよく知っていてもおかしくないと気がついた。  そういえば、ダイナーで出会った席で『親父さんとは武道訓練で一緒だった』と言っていたことを思い出す。だとすれば、その時、バディの相馬パパも一緒にいて顔見知りだったといわれれば頷ける。  そしてその男はもうこの世にいないこと。  そんな父親を持つ娘が、大河の妻であることまで大佐は気がついたのだろう。 「じゃあな、出航前、奥さんと楽しい時間を過ごして戻って来いよ」 「ありがとうございます。大佐」 「乃愛ちゃんも。たまには親父さんに顔を見せてやんな」 「はい、大佐――」  事情を知っていて、でも、大佐は『乃愛の父親目線』が優先しているのだと感じ取ってしまった。  どんなことがあっても『娘が航海に出るならば心配しているだろうよ、その前に顔だけでも見せておけ』――、そう言われたのだろう。  フランク大佐自らが、艦の出入りをチェックしてるので物々しい警備態勢ではあったが、強面でニヒルなイメージがあった大佐から温かい言葉をかけてもらい、乃愛と大河は恐縮しながら桟橋を歩いて上陸した。  今日は日が落ちてからの非番入り。夜の海は波音だけが耳に届き、涼しげな潮風のなか、ふたりで駐車場を目指した。 「思ったより優しい人なんだな。フランク大佐。イケメンだけど眼光鋭い強面で、口も悪く言い方もきつくて訓練もシビア、根を上げて警備隊を辞める隊員も結構いると聞いていたのに」
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