13.大佐と乃愛ちゃん

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「この前、『俺は女を護るために生まれてきた男』とかご自分で言っていたよ。ちょっと突っ込むとすぐにムキになって賑やかしいオジサマの面も見ちゃったしね。厳しくしているのは、隊員が無事に帰還できるよう守りたいからじゃないかな」  桟橋を渡り終わり、陸に上がったそこで大河が怪訝そうに乃愛を見下ろしてきた。 「おまえ、なんの話してるんだよ」 「え、なんのって?」 「そんなフランク大佐をどこで見たのかってことだよ。さっきも流しちゃったけどさ、『乃愛ちゃん』とか妙に親しげだったよな」  ああ、そうだった。まだ先日のことを伝えていなかったと乃愛は気がつく。ついに報告をしておく時が来たかと観念した。 「えーっとね。前回の非番でセブンに乗って、いつものカフェに夕食に行ったら、そこで御園先輩とばったり会っちゃったんだ」 「え、あの、御園先輩と!?」 「先輩から『ダイビングガールちゃん!』って、声をかけてくれたんだ。それでいろいろ話し込むことになって、一緒に食事をしたの」 「ふ、ふたりきりってことだよな……」 「そうだよ。だって、事件の日、御園先輩も戸塚中佐と一緒にいたじゃない。私が飛び込む時に近くで見ていたんでしょう。だから『あの時の隊員』というかんじで、いろいろ聞かれたんだよ」  大河は絶句していた。彼にとっても『遠い向こうにいる国際クラスの先輩、セレブリティグループ』と疎遠な存在だったからだ。  そこで大河にも、『お互いに往年のスポーツカーに乗っていた』とか『父のことも知っていた』とか『おなじスクールの卒業生と知って先輩も驚いていた』などなど、幼馴染みにはひととおり伝えてみる。 「まて。フランク大佐とはどうしてという話だったよな」
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