14.素敵、大好き

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14.素敵、大好き

 再度、週休と非番の二日休暇に入った。  いつものライフスタイルで乃愛は過ごす。お気に入りの夏靴、新しいネイルチップで飾る足先、シンプルなシャツとパンツスタイル。愛車のRX7で、海辺のカフェに行く――。  だが今回はカフェではなく、海軍街の中心にある繁華街へと向かった。  ここでも海が見える店が海岸線にずらっと並んでいる。  南国らしい蘇鉄の木が道路のセンターに並び、店先にはピンクや白の百日紅(さるすべり)が咲きほこり、潮風に揺れている。  海と花の匂い、春が終わろうとしているすこし蒸し暑い夜。しかし、この日の夜空は星が見えず、どんよりとしていた。そのせいで、海の波は少し荒く、波の音もざわざわとしていた。  店が並ぶ海の道路沿い。その中の一店、赤い大きな看板があるファーストフード店が見えてきた。広い駐車場に愛車を駐めて、店内へと向かう。  ショップクルーの『いらっしゃいませ』という声を耳に、オーダーカウンターへと乃愛は並ぶ。自分の番が来て、レジにいるクルーにいつものお気に入りセットを頼んだところで、フライドポテトをレジ横カウンターに出してきた男性クルーと目が合った。この店の店長だった。母より若い既婚者男性、小さなお子さんがいるパパさん店長だ。 「あ、剣崎さんの……」 「こんばんは。いつも母がお世話になっています」 「お母さんを呼ぼうか? いま奥に入っていて」 「いいえ。来ただけです。非番のうちに、ここのチーズバーガーと、フライドフィッシュを食べておきたかったんです」  乃愛のお気に入りを告げると、黒いクルーユニフォーム姿の店長が嬉しそうに笑ってくれる。 「新型空母、もうすぐお披露目出航するんだっけ」 「はい」 「ちょっと待ってて。テーブルまで持っていくから」
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