14.素敵、大好き

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 屋根があるといっても、雨がしのげる程度。風が吹けば雨も吹き込んでくる。今夜の雨は風はないが、屋根からどしゃどしゃと滝のように雨水が落ちている。そのため、待合スペースは水浸しになっていることがすぐにわかるほどの状態だった。  これではバス待ちをしているだけで足下も濡れてしまうだろう。  だからなのか。バス待ちの人は、たったひとりだけだった。  腕時計を見て、バスがやってくることを心待ちにしているのか。長袖の白シャツ制服を着ている隊員が一名。スーツケースを片手に、足下を濡らしながら待っている。  フロントガラスの向こうにそんな光景が見えていて、乃愛は車でそこを通りすがろうとした。  だが、その一人だけの隊員は金髪の男性で――。  乃愛ははっとする。  停留所を僅かに通過、乃愛はウィンカーを点灯させて路肩に駐車した。
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