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15.気高い男の言葉
運転席サイドに差し込んでいる置き傘を手に取り、ドアを開けて下車する。
そこからバス停にいる男性隊員に向けて声を張り上げる。
「戸塚中佐――!」
乃愛が声を張り上げると、バス停にいる戸塚中佐がきょとんとした顔をこちらに向ける。
「お疲れ様です、剣崎です。バス到着まで、あと何分ですか!」
制服姿の彼が目をまん丸くさせながら、乃愛だと気がついてくれたようだった。
「何分ですか!」
「えっと、あと十二~三分……」
「まだこの雨やみませんよ。どこまでですか」
「え、少尉……の、車……?」
「けっこうな土砂降りですよ。よろしかったら、乗ってください!」
戸塚中佐の戸惑う様子を知り、乃愛は傘を片手にバス停へと駆け寄る。
「どこまでですか」
「マリーナ方面のビジネスホテルなんだ」
「送ります。スーツケース、トランクに入れますね」
「いや、でも――」
「いいですから。見つけちゃったんだから、このまま素通りできなかったんですって」
傘を差し出すと戸塚中佐は観念したのか片手に取ってくれる。
「運転席に戻ってトランクを開けますから、ご自分で入れてくれますか」
「わかった。ありがとう!」
乃愛はそのまま雨に濡れながらの疾走にて運転席へと戻った。トランクのロックを解除すると、リアに待機している戸塚中佐が、傘を片手に持ちながらもスーツケースをトランクへと入れ込んだ。そこから雨の中、助手席へ。ドアを開けてさっと入ってきた。
傘を閉じ金髪の雫を払いのけながら、制服姿の麗しい男性が助手席へと到着。
「ありがとう。実際に助かったよ。突然とんでもない土砂降りになってバス停に浸水してきたもんだから。でもタクシーも通らなくて、ひたすらバス待ちすることになってしまっていたんだ」
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