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17.不倫疑惑
その噂が艦内で流れていると乃愛が知ったのは、艦に戻って四日後ぐらいだったか。昼食時だった。
DC隊が通う艦内カフェテリアで、大河と共にランチ中だった。若い男数名が食事をしているテーブルから、妙な視線を向けられたことに気がついたのだ。
『あいつ?』
『そうそう、あの女。このまえ甲板から飛び込んだやつ』
『そのときにお近づきになったんだろ』
『やっぱ若い女がいいわけかよ』
『クインもおじさんってことか。なんか清く正しい男みたいに言われていたけど、外面だけってことだったんか』
そんなヒソヒソ声の会話が聞き取れた。
大河も『なんの話だ』と囁いたが、乃愛とクインさんの話題だということは察したようだ。
乃愛よりも若い新米の男たちなのだろうか。面白そうにニヤニヤとこちらを見ている。
『女って、すぐにイケメンに飛びつくんだな』
『厄女っていわれているらしいぜ。死者がでるかもしれない女ってさ。なにしたんだよ、あのDCの女――』
だいたいの内容が理解でき、途端に大河が眉間にしわを寄せ険しい眼差しになる。それでも大河も乃愛も動揺はせず、そこはひとまず聞き流した。
だが二人で小声にて囁き合う。
「乃愛、聞こえたか」
「聞こえた」
「身に覚えなんかないよな」
「あるわけない」
「ついこのまえ、愛妻家だ愛妻家だと上官達が揃ってご本人をからかっていたのに。どうしてあんな噂が? しかも多数いる女の中から、何故、乃愛が相手だと?」
「えっと、身に覚えがひとつあるにはある」
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