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いや乃愛が引き寄せる厄が、戸塚中佐に? やっぱり自分は『厄女』?
「でも。胸くそわりいな。奥さん妊娠中だろ。男が妻の妊娠中に浮気するってよく聞く話じゃないか。まるでそこに当てはめたみたいで。戸塚中佐がそんなことをしない夫さんだと誰もがわかることなのに、誰かが中佐を貶めているってことだよな」
大河の見解に乃愛は青ざめる。自分が噂されたことじゃない。戸塚中佐もきっと身の潔白を毅然と突きつけるだろう。それでも! お腹に赤ちゃんがいる奥様が『嘘でも噂で聞いてしまったら』、それだけでも精神的にダメージを受けるのではないのか?
もし、奥様になにかあったら?
乃愛はゾッとする思いで再度、青ざめた。
『厄女にかかわったばかりに、戸塚夫妻の子供が流れた』
――なんて、なったら?
普段、気強くして気にしないようにしている。艦内の小火に故障なんて日常茶飯事でそれをカバーして運航するのが『船乗りの仕事』だ。乃愛がいるから起きたインシデントと言われても、それは『こじつけ』だと思えていたから。
口さがない隊員はすぐにふざけて『おまえが乗艦していたからじゃないか~』と面白おかしくからかってくるが、わかっている人はわかっている。特に上官は『根拠がない。こじつけだ』と冷静に見極め、それで締めて終わり。
しかし乃愛につきまとった今回の厄『謂われのないの噂』は、人を傷つけるものだ。
自分だけが言われるなら、内心では傷ついてもまだ我慢できた。
でも今回は我慢できない! 戸塚中佐と奥様を傷つける噂なんて許せるか!
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