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「…すみません、きっと今日で最後です」
俺たちは自然と感じ取っていた。
ひたなとるなは、これでもう最後になると。
ママはしばらく黙って俺たちを見つめていたが、立ち上がると側に来てくれた。
「ひなたとるなの代わりに、ハグさせてちょうだいね。そして…あの子たちに伝えて欲しい…」
ママは俺とるなを優しく抱きしめてくれた。
お花のような優しい匂いに包まれる。
「私こそ、二人に出会えて本当に良かった。至らない飼い主だったけど、大好きな気持ちは今も変わらないよ。賢くて優しいひなた、可愛いお姫様のるな…本当に大好き。二人の幸せをずっと、ずっと祈っているからね」
ママ、ありがとう。
きっと、目の前にいるのが「ひなた」と「るな」だってもう分かっているよね。
俺たちは名残惜しい気持ちでいっぱいだったが、ママと最後のお別れをした。
おそらく、この記憶もお互い消えていくような気がする。
るなと話した最初の公園に俺たちは戻ってきた。
二人でベンチに座った。
「ひなたともこれでお別れなのかな…」
「…たぶんな。前世の記憶は明日には消える、そんな気がする」
前世の俺たちの『ママに会いたい』は叶えられた。
神様は、この体を「陽介」「菜月」に返すだろう。
「また、会えるといいな…」
るなが俺の肩に頬を擦り寄せた。
それ、昔もよくやってたな。
「きっと、会えるよ。俺たちなら」
るなの顔を見つめ微笑んだ。
るなも大きな目を細めて笑った。
俺たちはまた会える、そういう運命な気がする。
そこから始まるのは…きっと、また別の物語だ。
〜終わり〜
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