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伝えたい想い
新しい家が建ち並ぶ住宅街に、クリーム色の壁とオレンジの屋根、可愛らしい雰囲気の一軒家が見えた。
そこがママの家のようだ。
ママの息子がドアを開ける。
「ただいま、連れてきたよ」
奥の方へ声をかけると、50代くらいの女性が出てきた。
……ママ!!
俺たちはすぐに分かった。当時より丸みを帯びて外見こそ少し変わりはしたけど、柔らかい笑顔と優しい声は変わりなかった。
ママは俺たちの姿を見て、少し戸惑うような感じはあったけど、優しく声をかけてくれた。
「いらっしゃい。どうぞ、こちらへ」
ママの息子は「何かあったら、呼んで」とママに言い、小型犬と一緒に2階へ上がって行った。
内心ドキドキが止まらなかった。
初対面の今の自分たちを受け入れてくれたことに動揺したし、これからどう話を切り出すか、るなとの話し合いでも、まとまってはいなかったからだ。
るなからも緊張の匂いが嗅ぎ取れる。
きっとるなの耳には、俺の心音がバカでかく聞こえているだろう。
リビングに通され、ママは温かい紅茶を出してくれた。
…この香り、ママが好きな紅茶だ!
昔と変わらない香りに安心した。
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