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「誰だったんだろう…」
午前中の授業が終わり、渡された電話番号を眺めていた。
「陽介〜、飯行こうぜ〜!」
後ろから肩を組まれた。同じ学科の奏斗だ。
奏斗は番号の書かれた紙に気がつき、冷やかしてきた。
「何それ! もらったの!? 誰から!?」
「うーん…それが分からないんだよ。知らない子だとは思うんだけどなぁ」
食堂に移り、昼食をとりながら俺は、今朝の出来事を奏斗に話した。
「年下かぁ〜、いいね〜! 早く連絡してやれよ。待ってるぞ、きっと!」
「えっ、でもさぁ、なんか変なことに巻き込まれたら怖いじゃん…」
俺が電話をかけるのを渋っていると、奏斗は俺のスマホと番号の書かれた紙を取り上げ、勝手に電話をかけてしまった。
奏斗は彼女が電話に出たと分かると、俺にスマホを渡してきた。仕方なく出る。
「…もしもし? あの〜…、今朝バスで会った者なんですが…」
隣りで奏斗がニヤニヤとしている。
「あ、ひなた? 良かった〜! 連絡くれて」
彼女は心底安心したかのような口調だった。
「できればさ、直接会って話したいんだけど…」
彼女はグイグイと距離を詰めてくる。
ますます不信感が募った。
奏斗に助け舟を求めるも「不安なら会って確かめればいいじゃん!」と取り付く島もなかった。
仕方なく俺は、彼女と夕方待ち合わせをすることになった。
気がつけば、朝降り始めていた雨は止み、道路には水溜りだけが残っていた。
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