9人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
約束した時刻、大学から少し歩いた先の公園に俺はいた。
周りには遊具で遊ぶ子どもとそれを見守る母親、散歩中の飼い主と犬がいるくらいで、人通りは多くない。
「ひなた!」
突然の声に驚いた。
俺はベンチに座り、ぼーっと足元を見ていて彼女が近くに来たことに気がつかなかった。
長い艷やかな黒髪が風になびく。
小さな顔にちょっとつり上がった大きな目が印象的だった。
またこの子、俺のことを「ひなた」って呼んでる…。
「あの〜、今朝から思ってたんだけどさ、人違いじゃない? 俺、名前陽介だし…」
そう言うと、彼女は「あぁ」と笑って自分を指さした。
「私は、るな。でも今の名前は菜月だよ」
「ん? 今の名前…? どういうこと?」
るな、こと菜月は長めのため息をついた。
「ひなたは…まだ思い出せてないんだね」
俺は何の話をされているのか、この子と俺は何の関係があるのか、さっぱり検討もつかなかった。
菜月は「いちから説明するね!」といい、隣りに座った。
最初のコメントを投稿しよう!