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「男同士のセックス」と検索し、医師監修の記事から官能体験談まで、安形智史は片っ端から目を通していく。文章だけでは満足できず、ゲイ動画も買い漁った。最初、男優同士のセックスに全然興奮しない自分に焦ったが、知覧を受け手に当てはめたら速攻勃起した。早くあの綺麗な男を裸に剥きたい。キーボードに乗せた手が股間に向かう。
スッ、と襖が開く音に、智史は慌てて画面を変えた。何食わぬ顔を意識し、振り返る。
「何? 兄さん」
兄の視線はパソコン画面に注がれている。不安に駆られ、智史は画面をチラと見る。大丈夫、ちゃんと読書メーターだ。
「届いてたぞ」
兄の手には小包。
「あっ」
ネットで買ったローションとスキンだ。顔が燃える。
「ごめん、ありがとう」
差し出され、受け取るが兄は手を離さない。
「珍しいな。お前宛ての小包なんて」
「そうかな? たまに買うよ」
「これは?」
「……なんでもいいでしょ」
手に汗が浮かんだ。中を見たのかと勘繰る。でもガムテープを剥がした形跡はない。
なかなか手を離さない兄に苛立って、「そこはさ、男同士なんだから悟ってよ」
軽くあしらおうとするが、兄は無表情のまま。
「今度の子とは長続きするといいな」
表情と言葉が一致しない。智史は兄のこういうところが苦手だ。もっとにこやかに言ってくれたら、こっちだって肩の力を抜いて話せるのに。
「……うん」
やっと手が離れた。兄が部屋を出ていく。和室を襖で仕切った奥の六畳間が、智史のパーソナルスペースだ。兄は廊下側。認知症を患った祖母の世話をするために、兄は地元企業に就職した。
両親は智史が赤ん坊の時に離婚し、智史と兄は父方の祖父母の家に預けられた。海外赴任の父とは年に数回会うだけ。祖父は去年他界し、この家には兄と自分、祖母の三人だけだ。
隣の部屋の気配を気にしながら、小包を開ける。サラダドレッシングみたいな容器と、黒色の箱。妄想が途端にリアルに迫る。きっと知覧は経験済みだ。前の男を思うと嫉妬で狂いそうになる。もっと早くに出会っていれば……知覧と付き合ってからというもの、智史はどうしようもないことばかり考えている。
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