二人の週末

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私の名前は大山ちさ。31歳。会社員。新婚2年目のとてもラブラブでとても幸せな毎日を送っている。 愛して止まない夫寛大とは六年前の高校の同窓会で運命的な再会を果たし、恋に落ち、付き合い、そして今に至る。 とにかくイケメンでそれでいて優しく紳士で素敵な寛大に毎日ときめき、キュンキュン悶え・・・それはそれは素敵な毎日のはずだった。 一部を除けば・・・ 土日は仕事が休みなので寛大とゆっくりイチャイチャしながら寝坊しようと思っていたら、玄関のインターホンが鳴った。 私は深いため息をする。こんな朝早くからピンポンするのはあの方しかいないからだ。 そう、寛大のお母様敏子だ。 結婚したての頃は服も着替え化粧をしお茶菓子も準備し完璧にお出迎えしていたが、ほぼ毎週来るので最近は来るなアピールも兼ねてパジャマですっぴんでお出迎えしている。 「お母さん、朝早くからどうされました?」 引きつった笑顔で玄関をあける。 「おはよう、ちささん。あなたまだパジャマなの?」 お母さんは自慢の一張羅にばっちりメイクだ。 「あっ、母さん。来るときは先に連絡してって言ってるじゃないか。ごめんね、ちさ」 寛太は優しい。いつもお母さんより私を優先してくれる。 「寛太、朝ご飯食べた?お母さん作ってきたから一緒に食べようと思って。」 彩り良い野菜がたくさん入っているお弁当を広げだすお母さん。 「ホホホ、お母さん寛太君は朝はパン派ですといつも言ってるじゃありませんか。」 「フフフ、毎日パンばかりじゃ力出ないわよ。たまにはしっかり食べないと。」 この時ちさの背後には空を仰ぐ一匹の龍が、そして敏子の背後には大地を切り裂くような雄叫びをあげる猛虎が見えたとか見えなかったとか・・・ お母さんいつもいつも私と張り合ってくるけど、どういうつもりかしら。 いい加減子離れしてほしいわ。 ちささんいつもいつも寛太のことほったらかして、もう少し大事にしてほしいわ。こうなったら徹底的に鍛えてあげるしかないわね。 二人ともほんと仲良いよなぁ。とコーヒーを飲みながら微笑ましく眺めている寛大。 何だかんだでお義母さんの作るご飯美味しいのよねと心の中で思いながら爆食いする私。 一歩も引かないけれど食後に入れてくれるちささんのコーヒー最高なのよね。食べっぷりも良い。と口には出さないけれど思う敏子。 二人とももっと素直になれば良いのにと思う寛大。 朝食を食べコーヒーを飲み終えた敏子は、 「じゃあ、そろそろ帰るわね。」 とそそくさと帰り支度をし、 「また来るわね。フフフ」 と言い残し帰って行った。 「お義母さんいつも食べ終わるとすぐに帰るけれど、もしかして私達に気を使ってるのかしら」 「早朝からピンポンを鳴らすずうずうしさはあるけれど、あれでいて僕達の心配をしてるのかな」 と寛大。 二人で顔を見合わせて思わず笑みがこぼれた。 「コーヒー豆がそろそろ切れそうなの、買い物デートしない?」 私はウキウキ。 「もちろん、喜んで」 と寛大。 「そうだ、スイーツ買ってお義母さんちにピンポン鳴らしにいっちゃおうかしら。フフフ」 寛大は少し驚いた表情を隠しつつ 「きっと喜ぶよ」 と答えた。 楽しい週末が終わりまた明日から一週間が始まる。 週末。 ピンポーン♪ 「はぁー、またお義母さん朝早くから」 「朝ご飯持ってきたわよー」 やはり元気いっぱいの敏子。 「ホホホ、今日も受けて立ちますわよ、お義母様。」 「ちささん今日もまだ起きてないわね。私が起こしてあげないと。フフフ」 この時二人の背後に暗雲が押し寄せ一方には激しい竜巻が、もう一方には激しい稲妻が見えたとか見えなかったとか・・・ 私とお義母さんはやっぱりこうじゃなきゃ。 お互い張り合いながら、認め合うの。そうよ、 「私達はきっと運命の二人なのよ。」
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