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すれ違い
学校の教室、ユミとタクヤは隣の席になった。日常の授業や休み時間、彼らの距離は近いのに、心の距離はとても遠く感じられた。
ある日の昼休み、タクヤは友人たちとサッカーボールを蹴っていた。ユミは窓辺で彼の姿を遠くから眺めていた。彼の自由な姿に、ユミの心はきつく締めつけられた。彼女は彼に対しての気持ちを自分で認識していたが、それを口にする勇気がなかった。
一方、タクヤもまたユミの方をちらりと見る度に、胸が高鳴る感覚になる。喫茶店での彼女の冷静な態度とは裏腹に、学校では彼女の真剣な眼差しが彼の心を捉えて離さなかった。
しかし、二人とも自分の感情に気づきながらも、その感情を相手に伝えることができずにいた。学校の中で彼らは無意識に互いを避けるようになり、友人たちもその変わった雰囲気を察していた。
特に文化祭のプレパレーションで、ユミとタクヤは同じ委員会に所属していた。会議中も彼らの間には微妙な空気が流れていて、それは他の委員たちにも感じられた。
「ユミ、あのデザインでいいと思う?」とタクヤが提案すると、ユミは「うーん、ちょっと考えてみる」と返答。彼女の言葉には何か違和感があった。会議が終わった後も、二人は互いに目を合わせることなく、その場を去った。
このすれ違いの日々は、文化祭が終わるまで続くこととなる。それぞれが持つ未練や不安、恐れを乗り越え、心の距離を縮めることができるのか。二人の青春の日々は、甘くもほろ苦い挑戦の連続だった。
次の日、学校でユミは親友のサキとその日の出来事を共有した。「アイスコーヒーが冷めないうちにという意味がわからないなんて、本当に彼は空気が読めないよね。」と笑いながら言ったユミ,「勘違い野郎?w」とサキは言った。だが、心の中ではタクヤへの気持ちに迷いが生まれていた。一方、タクヤも自分の友人、ヒロシにユミとの出来事を話していた。「ユミはどう思ってるのかな、僕の気持ち、ちゃんと伝わってるのかな」と悩むタクヤ。
伝えてもいない言葉を相手に受け取ってもらえたかな?と浮かれているタクヤであった。
学校では、二人の間にはまだ微妙な空気が漂っていた。ユミは自分の心の中での葛藤を隠しきれずに、避けるようにしていた。タクヤも、ユミの態度に気付いていたが、どう接するべきか分からずにいた。
ある日、サキがユミに助言をくれた。「ユミ、タクヤ君との関係、冷めないうちにちゃんと話し合った方がいいよ。」この言葉に、ユミは改めてタクヤとの関係を真摯に考えることを決意した。
放課後、ユミはタクヤに「今度の休み、またあの喫茶店で会わない?」と誘った。タクヤもそれに応じ、「了解、じゃあまたあそこで」と笑顔で返答した。
約束の日、ユミは先に喫茶店で待っていた。店員がアイスコーヒーを運んできたとき、「あなたのアイスコーヒー、冷めないうちにどうぞ」と再び言われ、ユミは笑いながら「ありがとう、大切なアドバイスね」と返した。
タクヤが店に入ってくると、ユミは彼の目を真っ直ぐに見つめ、「タクヤ、私たち、ちゃんと話す時間が必要だと思う。」と言った。タクヤはうなずき、「うん、分かってる。今日はそのためにここに来たんだ。」と答えた。
二人は心の距離を縮めるための大切な時間を過ごし始めた。
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